人の描き方をマスターしたい人のために、人物画を描くのにおすすめのデッサン本を紹介します。
書店の"絵の描き方の本コーナー"に行ってみればすぐわかりますが、デッサン本は無数にあり、日々新しい本が追加されていっています。
ですので、これから絵を描きはじめる初心者の方が、どれを選んでいいかわからなくなるのは当然です。
初心者だからといって、とりあえず「初心者向け」とタイトルに書いてある本を選べばいいというものではありません。
たとえ「初心者向け」とタイトルに書いてあっても、著者の解説が下手くそだったり、独自理論で顔のパーツの比率を計算していたりする本がありますので…。
じゃぁ、どうやって良いデッサン本を選べばいいよのっ!!
と悩んでしまうかと思いますが、大丈夫です。
「選んではいけないデッサン本(初心者は避けたほうがいいデッサン本)」さえわかれば、書店に並べられているほとんどのデッサン本は不要なものだとわかります。
本当に買う価値があり、いつまでも手元において参考にしたいデッサン本は、両手で数えられる程度しかありません。
本記事で紹介しているデッサン本5冊は、本当に買う価値のある本です。
無駄な時間とお金を節約して、最短最速で人の描き方をマスターするのに役立つはずです。
とはいえ、本の好みは人それぞれですから、私がおすすめしているデッサン本が合わない方もいるはずです。また、すでに持っている方もいるかもしれません。
そういう方は「選んではいけないデッサン本(初心者は避けたほうがいいデッサン本)」以外で、自分に合うデッサン本を見つけてみてください。
「選んではいけないデッサン本」以外のデッサン本であれば、ある程度クオリティが高い本である可能性が高いので、お金と時間をドブに捨てることは無いはずです。
それでは、さっそく選んではいけないデッサン本と、おすすめのデッサン本5冊を紹介します。
選んではいけないデッサン本
写真中心のデッサン本
初心者が"絶対に"選んではいけないデッサン本の一つがこれ。「写真中心のデッサン本」です。
写真中心のデッサン本とは、以下のようなものです。
一見、実物写真がたくさん載っているので良さそうに見えますが、おすすめしません。
なぜなら、情報量が多すぎるからです。
例えば「目」の描き方を学ぼうとして、目の写真を見ても、初心者はどう線を引けば写真のような絵に仕上がるのかわかりません。
- どこに線を引くか?(場所)
- どうを引くか?(曲線/直線)
- どの程度の大きさで描けば?(比率)
- 先の太さは?
- 濃淡の付け方は?
などなど、全て自分で写真から読み取って、線で表現できるように簡略化して描かなければいけません。
こんなこと、初心者にできるはずがありません。速攻で挫折します(苦笑)。
もちろん、実物がどうなっているのか?本当はどういうふうに見えるのか?を知っておくことは大切です。
ですので、こういった写真中心のデッサン本を参考用として持っておくのは悪くないです。
しかし、人物の描き方を学ぶのに写真中心のデッサン本を使うのは、ハードルが高すぎます。
まずは、すでに線画化(線で表現できるように簡略化されている)された挿絵が中心のデッサン本を選ぶべきです。
流行の絵柄を反映したデッサン本(要するに新しいデッサン本)
いま流行っている、アニメっぽいキャラクターを作例にしたデッサン本も、買わないほうがいいです。
なぜなら、たとえその絵柄で人の描き方をマスターしたとしても、10年後には別の絵柄が流行っているかもしれません。そうなると、せっかく学んだ時間が無駄になってしまいます。
また、廃れた絵柄が手癖となって染み付いてしまうと、なかなか新しい絵の描き方を習得するのが難しいというデメリットもあります。
要するに、応用が効かない描き方をマスターしてしまう危険があるってことです。
ですので、アニメっぽいキャラクターを作例にしたデッサン本は避けましょう。
流行り廃りに左右されない伝統的な(基礎的な)人の描き方をマスターすれば、それを起点として流行の絵柄に寄せた絵が描けるようになります。逆は困難です。
和書のデッサン本
個人的な意見になりますが、これから絵を描きはじめる初心者の方は、和書(日本の作者のデッサン本)よりも、洋書(海外のデッサン本を日本語に翻訳したもの)を選ぶほうがいいと思います。
なぜなら、『日本語に翻訳された洋書は、すでに本国で売れている実績があり、さらに海外で出版しても売れると判断されたから、日本語版が出版されている』からです。
要するに、国を超えて売れるほどクオリティが高いと判断されているわけです。
また、洋書(主にアメリカの本)は、根性論ではなく、なぜこう描くのか?という理由、根拠が明確に解説されているというのも、初心者におすすめの理由です。
和書の場合、精神論、論理の欠落、説明ベタといったものが、洋書に比べて多いように思われます。(偏見かもしれませんが…)
おそらく、和書と洋書の解説力の差は、文化の違いによるところが大きいと思います。
海外は様々な文化圏の人々が住んでいるので、なぜ?の理由を明確にしてコミュニケーションしないと、話し手が考えていることがきちんと聞き手に伝わりません。
一方、日本は「言わずとも察せよ」の文化です。なので、文章力に差が出るのは当たり前です。
よって、初心者は和書のデッサン本よりも、"日本語に翻訳された洋書のデッサン本"を選ぶのがおすすめです。
まとめますと…
- 写真中心のデッサン本
- 流行の絵柄のデッサン本
- 日本の著者のデッサン本
以上が、初心者が選ばないほうがいいデッサン本になります。
それでは、長くなりましたが、おすすめのデッサン本の紹介に移ります。
人物画を独学でマスターするのにおすすめのデッサン本5冊
マイケル・ハンプトンの人体の描き方
「マイケル・ハンプトンの人体の描き方」は、適度に筋肉や骨を簡略化されて描きやすい挿絵になっているものの、"簡略化されすぎていない"のがポイント。
詳しく描きすぎず、かと言って単純すぎない絶妙なバランス。
なので、初心者は、筋肉がどこからどこまでついているのか?どの程度のサイズで付いているのか?どのように動くのか?
また、どの骨がどのような構造で動いているのか?
等々を、挿絵を見るだけで自然と学び取ることが出来ます。
基本的には、ボックス・円錐・円柱といった、基本的な形状の組み合わせで人体の構造を解説してくれてますので、最初の1冊目のデッサン本として購入しても全く問題ありません。
An Atlas of Anatomy for Artists
「An Atlas of Anatomy for Artists」は、アウトラインがしっかりしていて、"迷い線(何重にも上書きした線)"がない挿絵が特徴的なデッサン本です。
迷い線がないので、どこにどう線を引けばいいのかわかりやすいです。
また、筋繊維が詳細に描かれているので、上記で紹介したマイケル・ハンプトンの「人体の描き方」のサブ本として購入すると、さらに人体の理解が進みます。
筋繊維が詳細に描かれているといっても、医学書レベルではなく、あくまで絵を描くのに必要な部分のみです。
バッキバキに体脂肪を絞ったボディービルダーの体つきをイメージしてもらえばわかりやすいでしょうか?
ああいう感じの筋繊維の解説図がたくさん載っています。
ただ、An Atlas of Anatomy for Artistsは英語版しか無いので、その点は要注意です。(ま、挿絵だけ見れば何となく分かるので特に問題はないとは思います)
⇒ An Atlas of Anatomy for Artists
もし、英語の本は受け付けないということであれば、An Atlas of Anatomy for Artistsの代替本として以下の「やさしい美術解剖図」をおすすめします。
やさしい美術解剖図
「やさしい美術解剖図」も、An Atlas of Anatomy for Artistsと同じく迷い線が少なく、アウトラインがわかりやすい挿絵のデッサン本です。
ただ、An Atlas of Anatomy for Artistsが版画のようにパキッとした絵であるのに対し、やさしい美術解剖図の絵はフリーハンドでちょっとふにゃふにゃした線です。
ですので、好き嫌い分かれるかもしれません。
ただ、筋肉や骨の名前が日本語で記載されているのは、英語版しか無い「An Atlas of Anatomy for Artists」とは違い、日本語版が出版されている「やさしい美術解剖図」ならではの魅力です。
人体デッサンの基礎 - 美術解剖の知識と応用
※上画像は英語版。日本語版は絶版のため、中古品しか存在していない。
G・ブリッグマンの「人体デッサンの基礎」は、海外のアーティストが必ず推薦していると言ってもいいほど、評価の高いデッサン本です。
ブリッグマン氏の絵柄は、なんというか…ストリートファイターのキャラクターのような絵なんですよね。ゴツゴツしててわかりやすいし、描きやすい絵です。
ただ…
- アウトラインがしっかりしていない
(どこにどう線を引けばいいかわかりずらい) - 印刷のクオリティが低い
(非常に古い本なので) - 日本語版は絶版
(中古はプレミア価格になっている…)
という問題があります。
デメリットが多いなと感じるかもしれませんが、本書はこれらのデメリットを上回るほどの良本なので、もし1万円以下で手に入れられるチャンスがあれば、買っておいても損はしないと思います。
もしかすると、絶版ではありますが、市営図書館などでおいてある可能性があります。なので、どんな本か確認したい方は、一度図書館に問い合わせてみるのもいいかもしれません。
ちなみに、日本語版でなくてもよいのであれば、英語版をおすすめします。英語版は2000円台で購入できます。
挿絵見て模写するだけであれば、英語版でも問題ありません。
⇒ 人体デッサンの基礎 美術解剖の知識と応用(日本語版)
⇒ Bridgman's Complete Guide to Drawing from Life(英語版)
目でみる筋力トレーニングの解剖学
最後におすすめする「目でみる筋力トレーニングの解剖学」は、正確に言うとデッサン本ではありません。
筋トレする人用の解剖学本です。
しかしながら、あまりにも筋肉の絵がわかりやすく、筋肉と筋肉名称の対応も理解しやすいということで、絵を描く人の中で人気が高い1冊です。
アーティスト用の本ではないので、絵の書き方に関する解説は載っていません。なので、この本で人の描き方を学ぶのは少し無理があります。
ただ、筋肉の形状や動きの確認用として持っておくのはおすすめです。
⇒ 目でみる筋力トレーニングの解剖学(男性の解剖図)
⇒ 美しいボディラインをつくる女性の筋力トレーニング解剖学(女性の解剖図)
以上が、初心者におすすめのデッサン本おすすめ5冊(人の描き方用)になります。
もしかすると、この5冊をすでに持っている、または買ったものの合わなかったという人もいるかも知れませんので、その他のおすすめ5冊も紹介しておきます。
その他のおすすめのデッサン本5冊
Atlas of Human Anatomy for the Artist
「Atlas of Human Anatomy for the Artist」は、G・ブリッグマン氏の「人体デッサンの基礎」上位互換版のようなデッサン本ですね。
こちらも海外のアーティストに人気が高いです。
実は、この本も日本語版が出版されていたんですが…、残念ながら絶版になっています。
英語版で良ければ1000円代で購入できます。
G・ブリッグマン氏の絵よりすこーしだけ線が整っているので、G・ブリッグマン氏の「人体デッサンの基礎」の絵があまりにもわかりにくかった人は、こちらの本を試してみるのも良いかもしれません。
⇒ Atlas of Human Anatomy for the Artist
シェパードの人体ポーズと美術解剖学
「シェパードの人体ポーズと美術解剖学」は、上記で紹介した「やさしい美術解剖図」と同じ作者の本です。
「やさしい美術解剖図」は、解剖学的な側面から人体を解説していたのに対し、「シェパードの人体ポーズと美術解剖学」は、人体がさまざまな動きをしたときに筋肉や骨がどのような位置に収まるのか?を理解するのに役立ちます。
要するに、「やさしい人物画」が基礎版。「シェパードの人体ポーズと美術解剖学」は応用版。といったところですね。
なので、もし「シェパードの人体ポーズと美術解剖学」は、「やさしい人物画」を学んだ後に購入するのがおすすめです。
人体のデッサン技法
ジャック・ハム氏の「人体のデッサン技法」は、主に各パーツの比率、バランスの解説に特化したデッサン本です。
例えば、目と目の間はどれくらいのスペースを開ければいいのか?目と耳の間のスペースは?口と鼻はどのあたりに描けばいいの?
といった疑問を解決してくれるのに役立ちます。かゆいところに手が届く本ですね。
ほかにも、こういうふうに描くと女性っぽく見えて、こう描くと男性っぽく見えるといった、簡略化(イラスト化)する際のポイントを解説してくれているのもGoodです。
人を描くのって楽しいね! - マンガのための人物デッサン
冒頭で和書は避けたほうがいいと書きましたので、紹介するかどうか迷いましたが、和書のおすすめデッサン本も一応紹介しておきます。
「その他のおすすめデッサン本」での紹介だから、まぁ許されるでしょう(苦笑)。
もしかすると知っている方も多いかもしれませんが、初心者向けに人の描き方を丁寧に解説している「人を描くのって楽しいね」というサイトがあります。
そのサイトを本としてまとめたのが「人を描くのって楽しいね!マンガのための人物デッサン」になります。
タイトル通り"マンガ化"された絵柄なので、詳細な筋肉の描き方、筋肉の名称などを学びたい場合は他の本を買うほうがいいでしょう。
ただ、イラストっぽい絵を描きたいときには、非常に参考になる本だと思います。
ま、本の内容は「人を描くのって楽しいね」で無料で全公開されているので、あえて本を買う必要はないかもしれませんが…
無料で公開してくれている"作者への感謝の意"として買うのも良いかと思います。
やさしい人物画
最後に悪名高い?「やさしい人物画」を紹介しておきます。いわゆるルーミス本ですね。
なぜか、初心者におすすめの本として勧められることが多いルーミス氏の「やさしい人物画」ですが…この本、初心者向けではありません。非常にわかりにくいです。
冒頭で紹介したマイケル・ハンプトン氏の「人体の描き方」のように、人体の動きを手取り足取りわかりやすく解説してくれて…いません。
また、そんなにわかりやすい絵柄でもありません。
しかも、絵の量より文章の量が多いので、見て学ぶというよりも、読んで学ぶ本ではないか?という印象です。
挿絵を見て、模写して、挿絵を見て、模写して…を繰り返しながら学ぶのに最適な本とは言えないと思います。
ただ、文章の内容は優れています。
アーティストを鼓舞してる文章がちりばめられていますので、絵がなかなか上達しないときに読むと勇気づけられます。
⇒ やさしい人物画
結局どれを選べばいいのか?
さて、おすすめデッサン本5冊とその他のおすすめ本5冊、合計10冊の紹介がおわりましたので、まとめておきましょう。
おすすめデッサン本
その他のおすすめデッサン本
以上になります。
10冊の中からどれを選んでいいか迷うかもしれませんが、「その他のおすすめデッサン本」は、先に紹介した5冊以外で紹介するとすれば…の本ですので、とりあえずは選択肢から排除してもらって大丈夫です。
まずは、「おすすめデッサン本」の5冊の中から選ぶのが良いかと思います。
極論すると、絵を真剣に上達させようと考えているのであれば、最終的に5冊全部買うことになると思います。
ただ、これから絵の描き方を学ぶ初心者の方は、5冊のうちからメインとサブの2冊購入すれば十分です。
メインのデッサン本で解説が足りない、または挿絵がよくわからない部分を、サブのデッサン本が補ってくれるような組み合わせがベストですね。
欲を言えば、サブサブのデッサン本としてしてもう1冊。合計3冊買えば、もうそれ以上は必要ありません。
3冊以上あっても、どの本を読んで学べばいいのか迷ってしまうだけですので。
参考書は多ければ多いほど良いわけではありません。自分にあった本を選んで学習するかが重要です。
本記事で紹介したおすすめのデッサン本5冊は、どれもAmazonでサンプル(無料)が読めます。
購入前にチラ見して、自分にあったデッサン本を選んでみてください。(「人体デッサンの基礎」は英語版のみサンプル表示可能)
▽デジタルイラストの描き方を学びたい方は、以下の記事でデジタルイラスト講座を紹介していますので、合わせて読んでみてください。
参考:【イラスト通信講座】初心者におすすめのイラスト通信講座まとめ(アナログ&デジタルイラスト)